不妊治療モラトリアム
半年ほどの癌治療が終わりました。
「ここまで抑え込んだら、大丈夫。ただし、不妊治療頑張れるのはいいところ3年。長くても5年と思ってね。それでも子供ができなかったら、手術(子宮全摘)だからね。」
私は嬉しくて、しかたありませでした。
これで3年は頑張れるんだ。
彼と籍をいれて、体外受精でもなんでも、3年間は死ぬ気で頑張ろう!!
私は晴れて、不妊治療へと戻ることができました。
私は排卵誘発剤などを使いながら、相変わらずタイミング療にいそしんでいました。
そのある日のことです。
内診を終え、診察室へ行くと、先生の顔は曇っていました。
(ああ、また妊娠はしていなかったんだな・・。でも大丈夫。まだこれから、体外受精とかもっと頑張るんだから!)
そんな心持でした。
しかし医師の口からでた言葉は、意外なものでした。
「うちでの治療は今日でおしまいです。」
「え、どういうことですか?」
「・・癌、再発しています。ここでの治療はもうおしまいです。紹介状書きますから、もっと大きい病院でみてもらってください。」
私は頭の中が混乱しました。
え?まだ3年たってないよ?
私これから、体外受精とか、もっともっと頑張るんだよ?
このお腹に子供宿すんだよ?
不妊治療を再開し、たった半年後のことでした。
そしてこの直後、結婚を約束していた彼に別れを告げられました。
「俺は子供が大好きだから・・、子供のいない人生は考えられないんだ。ごめん。」
(私だって子供のいない人生は考えられないよ・・。)
蜘蛛の糸が切れたのだと思いました。
私は地獄でひとり、立ち尽くしていました。
癌治療、開始。
私は車で40分ほどかかる、小さな総合病院の婦人科へ紹介されました。
かなり初期の子宮体癌との診断でした。
Ⅰa期とも言えないくらい初期とのことでした。
初期とはいえ、本来であれば、子宮全摘が基本的な治療とのことでした。
ただし、まだ29歳、未婚、子供が欲しいとのことで、ヒスロンというホルモン剤を内服しながら、定期的に子宮の内側を掻き出す治療をすることとなりました。
とにかくやるしかない。
そんな想いで内診台に向かいました。
まずは前処置として、膣から子宮になにやらいれます。
処置しやすいように、子宮をふくらます、と言われた気がします。
これがまた・・・めちゃくちゃ痛い!!
この時点で麻酔はなく、おもーーーい生理痛のような痛みでした。
それにしばし耐え、いよいよ掻き出しがはじまります。
こちらは全身麻酔をつかうため、麻酔剤を注射されて1分もしないうちに、意識が飛びます。
目が覚めた時は、ベットの上でした。
しばし休んだところで帰宅。
全身麻酔を使った処置のため、母の運転で帰宅でした。
たしか、これを1か月おきに3回くらいやった気がします。
ヒスロンは毎日飲まなければならず、しかもお値段が高くて、お財布が痛かったのを覚えています。
副作用はなく、ただひたすら毎日、不妊治療再開を願って飲み続ける日々でした。
子宮体癌、発覚。
そんな不遇な日々を何年続けたでしょうか。
29歳のときに、結婚を前提として付き合った彼氏ができました。
私は医師に頼み倒し、まだ未婚でしたが、ブライダルチェックをしてもらいました。
卵管造影などの今までより詳しい検査です。
詳しい検査をして、彼と結婚できれば、体外受精や人工授精、今までよりもっと高度な不妊治療ができる。
私は期待に胸を膨らませていました。
ある日の内診が終わった後のことでした。
「子宮がぼこぼこしてるんだよね~お薬だしておきますので、また2週間後にきてくださいね。」
私は出された薬をしっかり飲み、再度内診を受けました。
医師の表情が曇ります。
「ぼこぼこ、よくなってないなあ~・・。」
診察室に移り、内診のエコーを見せてもらいました。
「このぼこぼこね、はっきりとはいえないけど・・・癌かもしれない。別の病院で詳しい検査してもらえるかな?不妊治療はいったん休憩。僕が信頼している一番の先生紹介するから、そこでしっかり治してからまた不妊治療始めよう。」
ショックでした。
癌が発覚したからではありません。
不妊治療を一時ストップしなければいけない事が、心にずしりときたのです。
もし癌であるならば、早く治療して早く不妊治療を再開させたい。
とにかく、早く子供が欲しい・・!!
これが私のがん治療のはじまりでした。
子供が欲しい。
早期閉経による治療がはじまりました。
私は自力ではもう生理が来ない状態でした。
とにかくピルを飲み続け、卵巣機能を温存することしかできませんでした。
彼氏ができたこともありました。
私はできるだけ「避妊」はしませんでした。
いけないことだとはわかっていました。
しかし、たとえ結婚できなくてもいい。子供が欲しかったのです。
ピルの内服を中止し、避妊をせず致しまして、妊娠検査キットを使う。
陰性。
それでも生理はこない。
もともとくるはずのない生理。妊娠ではない。
そんな私が妊娠検査キットを使うなんて、茶番だ。
線が浮き出るはずのない妊娠検査薬を何度買ったでしょうか。
20代後半。
年齢的に、周りの友人は次々と結婚、出産をし、
SNSのアイコンが子供の写真になっていく。
職場の休み時間は子供の話ばかり。
子供が欲しい。子供が欲しい。子供が欲しい。
産婦人科の待合室でみかける子供たち。
いつも通りピルをもらい病院をあとにする。
駐車場までの少しの距離を我慢できず、涙がボロボロとでてくる。
私は少しずつ心を壊していきました。
不妊治療
私は23歳のときに生理が止まりました。
勇気出して婦人に行ったのですが、こはっきりとした原因がわからず、
「ホルモンバランスの乱れでしょう」
ということで、お尻に注射を打って生理をこさせる、を繰り返していました。
しかし、何度か繰り返しているうちに、注射を打っても生理がこなくなり、追加の注射を打つようになりました。
生理がこない原因がわからないまま注射を何本も打ち続ける日々に、私は不安になってきました。
そこで私は思い切って、ほかの産婦人科を受診することに決めました。
セカンドオピニオンです。
お恥ずかしながら、当時私は男性経験がなく、内診にかなりの抵抗がありました。
故に、先述の婦人科では内診はしておらず、採血のみの診断を受けていました。
私が行った産婦人科は、不妊治療で有名な病院で、医師のすすめもあり、私は意を決して内診を受けることにしました。
まさか初体験が内診となるとは。とほほ、でした。苦笑
内診はスムーズに終わりました。
医師は少し険しい顔つきで私に言いました。
「生理が来ない原因がわかりました。早期閉経ですね。」
え!?私はポカーンとしました。
医師は紙に手書きしながら、丁寧に説明してくれました。
「通常の卵巣は、親指の第一関節くらいの大きさです。
しかしあなたの卵巣は、小指の第一関節くらいの大きさしかありません。
卵巣の大きさは年齢を重ねるにつれ小さくなっていきます。
卵巣が小さくなるということは、残された卵子の数も少なくなるということです。
まずはピルを飲んで生理をこさせましょう。(注1)」
24歳。それが私の不妊治療のはじまりでした。
注1排卵を伴わない出血は、正しくは「消退出血」といいます。